社会保険料をまとめて支払おう!【個人事業主の節税対策】
個人事業主は税金を安くするための節税方法がいろいろとあります。今回は加入と納付が義務付けられている「国民健康保険」と「国民年金」について説明します。この2つは個人の所得から社会保険料控除として申告することができます。
【個人事業主の節税対策】社会保険料をまとめて支払おう!
1 個人事業主は国民年金と国民健康保険に加入する義務がある
会社員から独立して個人事業主となった場合、会社で加入する社会保険から国民年金と国民健康保険に切り替えることになります。
1-1 国民健康保険は収入に応じて保険料が決まる
会社員の健康保険も同じですが、国民健康保険料(国民健康保険税ともよびます)は「前年の所得金額」と家族の人数、居住する地域によって保険料が変わります。
ちなみに基礎控除などを差し引いた「課税所得」ではないので注意しましょう。
所得金額は家族全員分の金額を合算して算出します。その所得金額からまず、「所得額割」を計算します。
所得額割は「医療分」「支援金分」そして40歳から64歳であれば「介護分」の3種類になり、それぞれの料律を掛けます。
料律は市区町村によって違うので、自分が住んでいるところでどのくらいになるのかをチェックしておきましょう。
所得額割は所得金額に応じて決まる保険料です。そのほかに世帯につき上記3種類が加算される「平等割」と、家族の人数分が必要となる「均等割」もあります。この平等割と均等割も、市区町村によって金額が違います。
この国民健康保険料は、事業主の所得から全額を控除することができます。
1-2 国民健康保険郡組合を利用する方法も
国民健康保険は「保険料が高い」とよく言われます。これは個人事業主にとっては誰もが頭を悩ます問題かもしれません。
しかし個人事業主の職種によっては、「国民健康保険組合(国保組合)」に加入するという方法もあります。
国保組合は毎月の保険料が収入にかかわらず一定であるという利点があります。ただし国民健康保険と同様に、家族にも保険料が発生します。
1-3 国民年金の保険料は全国一律
個人事業主が加入する社会保険はほかに、国民年金があります。国民年金は国民健康保険とは異なり、保険料は全国一律同じです。
国民年金の保険料は基本的に、改定によって金額が増える傾向があります。令和元年度の保険料は16,410円となっています。この国民年金保険料も、事業主の所得から控除できます。
この国民年金も、家族(20歳以上)の人数分を納付することになります。
2 国民年金と国民健康保険は個人の社会保険料控除の対象になる
個人事業主の節税としては、事業税と個人の所得税・住民税の2種類があります。事業用の経費であれば、事業税の節税として経費計上できます。
しかし国民健康保険料と国民年金保険料は事業用ではなく、個人のための出費なので個人の所得税・住民税の節税になります。
この場合、経費ではなく「社会保険料控除」として確定申告で申告します。その際には支払いを証明する受領書や領収書の添付が必要です。
国民健康保険の支払い証明は、納付している自治体に申請することで送ってもらえます。国民年金の保険料に関しては、日本年金機構から控除証明書が送られてきます。
国民健康保険も国民年金も個人的な支出となりますが、事業用の銀行口座などから振替をする 場合には、帳簿に「事業主借」として仕訳をします。
個人事業主は家族全員の保険料をすべて支払うので、当然ながらその金額すべてを控除対象にできます。
3 国民年金は毎月支払わなくても控除できる
個人事業主は収入によって国民年金の支払いが厳しかったり、あるいは逆にまとめて先に支払ったりすることがあります。この場合にも、社会保険料控除をすることができます。
3-1 国民年金の後納制度を利用した例
国民年金は会社員とは違い、自分で納付する必要があります。会社員であれば強制的に天引きされますが、個人事業主は事業の運用資金などが不足すると、どうしても国民年金の納付は後回しになりがちです。
国民年金は未納が続くと督促状が届き、最終的には財産の差し押さえとなります。これは国民年金法に規定されていて、生活の維持や事業の継続に影響がない範囲で財産を差し押さえられるというものです。
また未納期間に応じて延滞金も加算されるので、支払いができなかった分に関しては極力支払いを済ませたいものです。
現在、未納となっている年金は2年前まで遡って納付することができます。これを後納制度とよびます。2018年9月30日までは5年遡ることができましたが、現在では2年となっています。
後納で支払った年金の保険料はすべて、社会保険控除として申告できます。独立したばかりの個人事業主は売上も少なく、国民年金が支払えないというケースも少なくないでしょう。
しかし、2年以内であれば未納とならずに納付できるので、売上の増加とともに遡りで支払うようにすればよいでしょう。
もちろん、どうしても経済的に苦しいという場合には、収入の額などに応じて4分の1から全額まで免除してもらうことができます。そのかわりに将来受け取れる年金も少なくなるので、できる限り後納制度を利用して支払っておくとよいでしょう。
3-2 国民年金の2年前納制度を利用した例
平成26年4月から、国民年金は最大2年分を前納することができるようになりました。つまり、最大で今後2年分の国民年金を前払いできるということです。
また、これまでは前納する場合には口座振替のみ対応していましたが、平成29年4月からは現金やクレジットカードでも納付できるようになっています。
前納した国民年金は、納付した年の所得から全額控除するか、各年分にわけて控除することができます。前納する場合には、年金事務所へ連絡して納付書を送ってもらう必要があります。
1年分を現金で前納する場合には年間で3,500円が、2年分を現金で前納すれば2年分で14,520円が割引されます。前納は2年のほかに、1年度分と6ヵ月分もあります。
3-3 前納した場合の注意点
仮に2年分の国民年金を前納し、その年の所得から保険料を全額控除したとします。
その2年が経過する前に会社に就職したとすると、厚生年金に加入するので納めた保険料の還付を受けることになります。そうなるとそのあとに、すでに済ませている確定申告の修正申告をしなければなりません。
まとめ
個人事業主にとって社会保険料は、かなりの負担になるものです。控除による節税で、少しでもその負担を少なくしておきましょう。また後納や前納をうまく利用すれば、資金的負担を少なくすることもできます。この場合でも納付金額は所得金額から控除できるので、覚えておいていただければと思います。
参考サイト
「国民年金保険料の強制徴収業務等について」
http://www.jbaudit.go.jp/report/new/characteristic28/fy28_kanshin_ch07_p6.html
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