個人事業主の節税は悪いこと?節税と脱税の違いとは【個人事業主の節税対策】
事業をされたことがない方にとっては、節税というのは少々後ろめたいものと捉えられる事が珍しくありません。
雇用される側であれば往々にして企業内の総務や人事が年末調整や確定申告を代行してくれるので所得税額をコントロールする発想がないものです。
このことから、よく間違われているのが節税と脱税を混同しているケースです。税金を払わないとはけしからん!ということですね。
ところが節税と脱税は明確に異なります。
節税とは個人事業主であれば、事業を継続することで社会に長くサービスを提供するためには積極的にやるべき業務なのです。今回は節税と脱税の違いについてお伝えしましょう。
個人事業主の節税は悪いこと?節税と脱税の違いとは
節税と脱税、それぞれの言葉の意味
まず最初に節税と脱税、言葉が意味するものの違いを簡単に(判りやすいように所得税に限ったニュアンスで)ご説明します。
「節税」とは税額算定の基礎となる簿記会計処理から決算処理の過程で、税法上認められた正規の解釈と処理の結果、課税所得額が減額していくことを指します。
「脱税」とは最終的な課税所得額が減りさえすればよいという発想で不正に売上高を低く見せたり、かかってもいない経費を過剰に計算することを指します。
節税は国が認めている(解釈次第では推奨しているとすら、いえる)正規の手続きであることと比べると、脱税は本来払うべき税金を払わないという違法行為となります。
節税は悪いことではない
既にお伝えした通り、節税は悪いことではありません。
節税と一口に言いますが、節税を構成する要素はまず「青色申告」「適切な経費計上」に始まります。これらは控除額を認めることからも判るように、国自らが推進する方向性です。
節税を実行するためには「青色申告」によって正しい確定申告を行うこと、事業・プライベートで使った金銭を適切に事業按分する必要があります。
どんぶり勘定の経営ではない、事業の収支をクリアにしていく作業こそが節税です。経営を適切に分析するためには、むしろ絶対に必要な作業とも言えるでしょう。
また、国民年金基金・小規模企業共済・経営セーフティ共済・iDeCo(確定拠出年金)の活用で個人事業主の老後資産を形成することや連鎖倒産を防ぐことも節税です。
近年、わが国の年金制度については心配になる話題も増えてきております。個人事業主はサラリーマンと異なり国民年金のみですが、これらの制度で攻めの資産形成ができます。
年金制度の運営上は人口構成比が厳しい日本ですが、個人事業主が自助努力で資産形成することは法的に保障されている正規の手続きなのです。
節税と脱税は違う
前段で節税について説明しましたが、いずれにしても節税は国が認めている正規の手続きの範囲内で行われることだということがご理解いただけたと思います。
これと比較すると脱税というのは、最初から税制を守る気がない違法行為になります。具体的な手法は後程見ていただきますが節税とは全く違う構図です。
税金を支払う私達からすると、すぐには信じられないかもしれませんが、日本の税制は「払える人が払える分だけを公平に負担する」という発想に沿っています。
所得税制の中で最も大きな特徴である累進課税制度(簡単にいえば、余裕があればあるほど税率が高くなる制度です)は公平に負担する発想の最たるものの1つです。
このため「本来払わなくてよい税金を払わないための手続きをとる」節税という話も出てくるのですが、脱税は最初から正しく税額を申告する気がないという違法行為です。
これは日本の税制が持つ公平性を全面的に否定するもので、脱税がまかり通ることがあれば社会を維持運営していく税制が崩壊することに繋がります。
税制を根本的に否定している、脱税の具体的な手法
脱税がどれほど良くない行為かを簡単にご説明します。
個人事業主が積極的にコントロールできるのが所得税であることは過去の記事で既にお伝えしています。
復習になりますが所得税の税額を求める基本的な計算方法は、次にまとめる3段階です。
- 収入–経費=所得金額
- (所得金額–所得控除)×税率=所得税額
- 所得税額–所得控除額=納税する金額
個人事業主に課せられる主な税金は所得税・住民税・事業税・消費税の4つです。この4つの中でも、個人事業主に影響が大きいのは所得税です。住民税と事業税は所得税の大小と連動する性格があるからです。
消費税は売上高に直接連動するので節税がやりにくい性質を帯びています。まず、個人事業主に課せられる税金について、これらの大前提をよく覚えておきましょう。
個人事業主ができる脱税の手法といえば主に2つです。
- 売上高を過少に申告することで、課税対象額を減らす
- 経費を過剰に申告することで、課税対象額を減らす
いずれも文字通りなのですが…実際よりも収入を低く申告したり、経費を多く申告することで最終的な利益を低く見せることで所得税を減らすということですね。
所得税が減ることで住民税と事業税が連動して減りますし、売上高を過少に申告すれば消費税まで連動して減ることになります。
これが実態と異なる数字を申告することで税金の支払いから逃れること、まさに脱税という手法です。自分だけが税金を負担する気がないという違法行為です。
脱税は税務署からは丸わかりです
確定申告は良心を前提とした自己申告制になっています。それ故に脱税行為が発生する余地があるのですが、税務署からすれば脱税はすぐにわかります。
脱税がわかる根拠は様々ですが、主なものとして以下のものがよく言われています。
- 脱税した確定申告は業界の平均的な数値、傾向と大きく異なること
- 地域内での比較で所得額や経費額に大きな隔たりがあること
- 営業実態や地域住民から得られる情報と確定申告の数値にズレがあること
脱税がすぐにわかるというのは、考えてみればもっともなことなのです。何故なら本来発生する税額を不正に操作するのが脱税ですから、実態や業界平均と比べてかなり大きな差異が発生してしまいます。
個人事業主の税金を管理する税務署がそれを見逃すはずがありません。また1年2年バレなかったから大丈夫ということでもありません。「泳がせているだけ」かもしれませんよ?
追徴課税で済めばまだいいほうで、最悪の場合にはもちろん逮捕だってありえます。
税金のコントロールは正しい手法の節税で
個人事業主がびくびくしながら脱税するメリットはありません。正しい節税をやり切ったうえで、適切な税金を支払ったほうがいいと考えます。
正しい節税をやり切るということは資産形成もうまくいっていることになります。適切な税金を支払っているということは事業で現金が残っていることの証です。
この状態こそが、個人事業主が経営上も人生設計上もうまくいっているということになるのです。短絡的な脱税を考えず、よりよい暮らしになるよう願っています。
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