少額減価償却資産の特例・一括償却資産を上手に利用しよう!【個人事業主の節税対策】
個人事業主は備品などの購入費用を経費として計上できますが、実はその金額によっては数年間に分けたり、あるいは一括にしたりと自分で選択することができます。
そこで今回は節税効果を選べる「少額減価償却資産の特例」と「一括償却資産」について説明します。
【個人事業主の節税対策】少額減価償却資産の特例・一括償却資産を上手に利用しよう!
減価償却資産とは
個人事業主は事業において売上を出すために要した費用を経費として計上することができます。そのひとつに、減価償却資産があります。
減価償却資産の項目について
個人事業主が事業を行う際には、いろいろと必要になる備品などがあります。たとえば机や椅子、パソコンなどの物品・備品を購入することになりますが、これらはすべて青色申告で経費計上できます。さらに金額によっては、「減価償却」する必要もあります。
減価償却とは
減価償却とは、その取得価額を数年かけて少しずつ経費計上することです。そして、項目ごとに減価償却する年数、つまり「法定耐用年数」というものが決まっています。
たとえば先ほどの例では、机や事務椅子、キャビネットは金属製で15年、その他のもので8年となっています。パソコンの場合には4年です。つまり、パソコンを購入したら毎年、その取得価額の25%を減価償却費として経費に算入できることになります。
10万円未満は「消耗品費」として計上する
ただし取得価額が10万円未満である場合、減価償却ではなく「消耗品費」として一括で経費計上できます。
たとえばパソコンを購入する場合、10万円以上ならば減価償却をしますが、10万円未満であれば消耗品として一括で経費にします。
文房具などは「事務用品費」として計上します。こちらも同じく、10万円未満までは一括で経費計上できます。
では10万円以上の場合は一律上記のように減価償却するのかというと、そうではありません。通常の減価償却のほかに、「一括償却資産」と「少額減価償却資産の特例」という、ふたつの方法から選択することが可能です。
一括償却資産とは
10万円以上20万円未満の取得価額のものに関しては、通常の減価償却のほかに後述する「少額減価償却資産の特例」と「一括償却資産」としての償却の3種類から選べます。
一括償却資産の仕訳方法
10万円以上20万円未満の物品は、納税者の選択により「一括償却資産」として処理できます。これは青色申告ではなく白色申告でも可能です。
購入した日にちや法定耐用年数にかかわらず、「3年間」で償却できるというものです。
これはひとつの物品に限らず、複数の物品をまとめて10万円以上20万円未満であれば合算して処理できます。
一括償却資産のメリット
20万円未満の物品を一括償却するメリットはいくつかあります。まず、法定耐用年数が異なる複数の物品を、一律で3年間償却できることで面倒がなくなります。
細かな品数で法定耐用年数が違うとなれば、それぞれを分けて計算するのは手間がかかります。
また償却期間が長いものがあれば、3年間に短縮することで経費を多く計上できます。その分、節税効果が高まります。
あるいは逆に、事業を始めたばかりの頃は耐用年数が短いものを長くすることで、経費を少なくできます。このメリットは、利益を確保することで事業融資を受けやすくできることです。
個人事業主それぞれの売上などに応じて、経費をコントロールできるのが一括償却のメリットといえるでしょう。
少額減価償却資産の特例とは
白色申告ではなく青色申告をしている個人事業主の場合、30万円未満の取得価額であれば「少額減価償却資産の特例」を利用することができます。
少額減価償却資産の特例では一括計上ができる
少額減価償却資産の特例は、使用開始した年度で一括して減価償却資産を経費計上することができる制度です。売上がそこそこあって、節税効果を高めたいという時に活用するとよいでしょう。
もちろん、そこまでの節税効果は必要ないという場合、逆に利益を確保できないことで事業融資を受けられないという場合には通常通りの減価償却をすることができます。
どちらを選ぶのも自由ですが、途中で変更することはできません。
特例は2020年3月まで
この特例は2020年3月31日までの間に取得した事業用の減価償却資産が対象です。
それ以降も特例が継続される可能はありますが、一応は期間限定とみておいたほうがよいでしょう。
ただし特例を適用するのは、「事業の用に供した事業年度」においてです。
特例の対象は年間合計で300万円以下
「少額減価償却資産の特例」で対象となるのは10万円以上30万円未満の取得価額となる物品・備品です。しかし年間での合計金額が300万円を超えるとなると、その超えた分は特例の対象外となります。
たとえば40万円の物品を8個購入し事業の用に供した場合、合計金額は320万円となるので300万円を超えてしまいます。
この場合、7個は特例で一括償却し、残りの1個は法定耐用年数に応じて減価償却することになります。
ただし、この特例の対象となるのは「2020年3月31日までに取得し、事業の用に供したもの」となっています。
つまり購入はしているものの、実際に使っていなければ使用年度において一括償却が可能と考えられます。先ほどの例では、40万円の物品残り1個を翌事業年度で使用すれば、その年の確定申告で一括経費計上が可能というわけです。
事業年度が1年に満たない場合
たとえば個人事業主が開業届を出した年度が1年に満たない場合には、300万円以下の取得価額を12で割って、その事業年度の月数を掛けた額を経費として計上します。
対象となるもの
「少額減価償却資産の特例」の対象となるものは、備品や機械といった有形減価償却資産のほかに、ソフトウェアや特許権といった無形減価償却資産も含まれます。
消費税の扱いに注意を
取得価額に消費税を含めるか否かですが、事業主が消費税の申告納税が必要な「免税事業者」であれば税込金額で、そうでなければ税抜金額で計算します。
消費税を含むか否かで20万円未満あるいは30万円未満になるかどうかが変わることがあるので、注意しましょう。
まとめ
個人事業主は物品・備品の購入費用をいろんな形で経費計上できることがわかります。できる限り節税効果を高めたいという人も、あるいは利益を確保するため逆に年数をかけて減価償却したいという人もいると思います。うまく制度を活用して、有利な形で経費計上していただければと思います。
参考サイト
「主な減価償却資産の耐用年数(器具・備品)(その1)」
https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensukigu1.html「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
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