専従者給与を支払おう!【個人事業主の節税対策】
個人事業主は確定申告で青色申告をすると、節税面で大きなメリットがあります。その中のひとつ、専従者給与による経費計上について詳しく解説します。
【個人事業主の節税対策】専従者給与を支払おう!
1 専従者給与とは?
まずは専従者給与の概要について説明します。
1-1 専従者給与とは親族に支払う給与
個人事業主が青色申告で経費計上できるものに、専従者給与があります。これは個人事業に従事する親族に対して、その報酬として支払う給与のことです。そしてこの専従者給与は、そのまま経費として収入金額から引くことができます。
個人事業主が従業員を雇っている場合には、その給与は「給料賃金」として、同じように経費にできます。
ちなみに事業主自身に対しては給与を支払うことはできないので、経費計上はできません。
1-2 具体的な申告の方法
専従者給与はそのまま経費として計上できます。青色申告では複式簿記により仕訳をしますが、専従者給与は次のように仕訳をします。
- 借方勘定科目 専従者給与
- 借方金額 〇〇円
- 貸方勘定科目 現金(あるいは預金)
- 貸方金額 〇〇円
- 適要 ◯月分 専従者給料
もし源泉徴収しているなら、貸方勘定科目に「預り金」として金額を入れ、摘要に「○月分 源泉所得税」と記入します。
2 どれくらい節税できるのか
専従者給与はどのくらい節税になるのかを説明します。
2-1 専従者給与は経費としてそのまま計上できる
専従者給与を支払い、それを経費として計上することにより様々な節税効果を生み出します。
まず経費計上することで、単純に収入金額を引き下げることによって課税所得が下がり、所得税と住民税が安くなります。場合によっては税率が下がることで、大きな節税につながります。
また専従者給与には給与所得控除があるので、全額が課税されることはありません。
つまり、個人事業主の所得を分散させることによって、親族の所得控除が生じたり税率が下がったりすることで大きな節税効果につながるということです。
2-2 白色申告の控除との違い
白色申告にも、「事業専従者控除」というものがあります。青色申告では給与金額を丸ごと経費にできますが、白色申告の場合は支払った金額に関係なく一定額が控除されるのみです。
控除できる金額は次のうち、どちらか低いほうとなります。
- ① 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円
- ② 配偶者でなければ専従者一人につき50万円
- ③ 控除をする前の事業所得等の金額を、専従者の数に1を足した数で割った金額
いずれにしても、給与として支払う金額よりも低い金額となるでしょう。
3 どういった条件を満たす必要があるか
個人事業主として青色申告を行い、親族に給与を支払っても、そのままでは経費として計上することはできません。経費として認められるためには、「青色事業専従者給与の特例」を満たすためのいくつかの条件をクリアしなければならないからです。
3-1 事前に申請が必要
まず「青色事業専従者給与に関する届出書」という申請書を管轄の税務署に提出する必要があります。
この申請書の提出期限は、専従者給与を経費とする年の3月15日までと決まっています。そのうえで、翌年の確定申告で経費として計上できるようになります。
もし1月からではなく年間の途中から給与を支払うのであれば、提出期限は雇用から2ヵ月以内です。
ここで申請書に記入する給与の金額について注意すべき点があります。
この金額は必ず支払わなければならない額ではありません。あくまでも実際に支払う給与額の上限として申告するものです。また「仕事の内容・仕事の程度」という欄があります。
ここに、支払う給与の金額に見合うような内容を記載するのがポイントです。
申告した専従者給与金額は、必ずしも経費として認められるとは限りません。「労務の対価として妥当である」と認められなければ、経費としては認められないのです。
そこでこの申告書の仕事内容と1日の従事する時間を妥当性のあるものにする必要があります。さらに勤務実態の有無を確認できるように、仕事内容の説明ができる日報を作成したり、あるいは出勤簿を作ったりといった記録を残すことが大事です。
3-2 専従者として認められる条件
また専従者として認められる配偶者や親族の条件というものもあります。これは、以下の条件すべてを満たすことが必要です。
- イ 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
- ロ その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
- ハ その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること
(国税庁公式サイトより)
3-3 専従者給与を経費として認めてもらうコツ
たとえば専業主婦である配偶者を専従者として給与を支払う形にし、経費として認められれば簡単に節税できるように思えます。しかし実際には、その給与に見合う仕事をしているか、年間で6ヵ月を超える実績があるかをチェックされます。
仮に途中でパート勤めを始めて、それが6ヵ月を超えるとなれば専従者として認められなくなります。ただし、そのパート勤務の時間と専従者としての勤務時間に整合性があれば、なおかつその記録を残していれば、経費として認められることもあります。
決して実態のない従事で”給与を支払う形”にしないということが大切です。
4 給与額はどの程度にすべきか
専従者給与はすべての金額を経費にできるので、できる限り大きな額にすれば得すると思えます。しかし、労務の対価として見合うものかどうかをチェックされます。
また配偶者が専従者となれば、青色申告で配偶者控除は適用されなくなります。年間で配偶者の収入が103万円を超えると、所得税と住民税が発生するようになります。さらに事業主がサラリーマンで、会社から扶養手当をもらっているのであれば、その扶養手当もなくなります。
さらに専従者の収入が130万円を超えると、事業主の会社の社会保険から抜けて自分で国民年金と国民健康保険に加入しなければなりません。
その負担分以上の節税効果があればよいのですが、そうでなければむやみに専従者給与は高くしないほうがよいでしょう。
まとめ
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p class=”p1″>専従者給与はうまく利用すれば、それなりの節税効果を生み出します。ただし事業主の事業に従事した記録を残すこと、適切な金額に設定することなど、注意すべき点もあります。社会保険に関してなど、事前にしっかりとチェックしたうえで利用するようにしましょう。
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