仮想通貨の確定申告を税理士に依頼する場合の流れと書類作成が完了するまでに必要な日数について
前回は、「(旧)税理士報酬規程」とGuardianの料金表を確認し、仮想通貨で利益を獲得した方が税理士に相談する場合の報酬について記しました。
今回は、筆者の税理士報酬についての考え方を記した後、依頼人が税理士とどのようなやり取りをするのかを記していきたいと思います。
仮想通貨の確定申告を税理士に依頼する場合の流れと書類作成が完了するまでに必要な日数について
Ⅰ.筆者の税理士報酬の考え方
1.筆者の考え方
前回、「(旧)税理士報酬規程」やGuardianの料金について記しましたが、筆者は、これらの税理士報酬が必ずしも仮想通貨の税務計算サービスに適した料金表になっていないと思っています。
仮想通貨の損益計算の煩雑さは、利益(所得)の金額でもなければ、取引量でもなく、「取引の質」に依存するものだからです。
ここで言う「取引の質」とはICO、ハードフォーク、ハーベスト、仮想通貨による商品の購入、チャットボーナスまで、仮想通貨には様々な増減理由・取引理由があるということです。
いくら儲かったかは、税理士が行う計算の煩雑さとはあまり関係がありません。
2.取引内容が重要
筆者が、仮想通貨の税金計算の依頼のお見積りを出すとしたら、取引の内容(上記の「取引の質」)をよくお聞かせいただいて、複数回のお打合せ時間を加味した、作業時間を基準に従量制で金額を提示させて頂くことになります。
もう少し具体的に言うと、オーダーメイドであることをご理解頂き、おそらくGuardianよりはもっと高い金額をご提示させて頂くことになると思います。
このようなオーダーメイドのような仕事のやり方は、個人の税理士事務所だからできるものと思います。
Ⅱ 税理士に依頼する(年内の相談の場合)
1.税理士にはいつ相談したらよい?
税理士に相談するのは、年明けの確定申告の直前で良いと思っていらっしゃる方もいらっしゃるようです。
しかし、特に大きな利益を獲得された方は、年が明ける前、できれば11月や12月には税理士に相談しておく方が良いと思います。
その理由は節税を検討できるからです。
企業が定期的に税理士と顧問契約をしているのも、事後的ではなく、タイムリーに税理士から助言が受けられることを期待されてのことだと思います。
年内の相談であれば、億り人がいくら「益出し」(利益確定)して、税金がいくらで、納税資金をいくら取っておけばよいかということがシミュレーションできます。
翌年の3月に納付する税金がいくらか分かってしまえば、次の作戦が立てやすいのです。
税理士に相談するのが早ければ早い程手を打つ時間が確保できるでしょう。
2.投資助言
投資へのアドバイスは税理士の本務ではありません。
しかし、税理士はファイナンシャルプランナーの資格を持っていたり、筆者のように企業の財務部門での勤務経験があったりして、比較的「金融リテラシー」がある人が多いのも事実です。
税理士は「投資顧問」とは違いますから、特定の金融商品を勧めるようなことはしません。
しかし、筆者は、税理士としてポートフォリオを拝見する中で、「リスクを傾けすぎではないでしょうか?」「あの取引所は大丈夫でしょうかね?」というように、投資家視点でのアドバイスをさせて頂いています。
なぜこのようなことを言うのかというと、手前味噌ではありますが、筆者が「億り人Nさん」に助言をさせて頂いた後に、有名なコインチェック社のXEM(ネム)流出事件が発生したからです。
大きな事件の前に少しでも警鐘を鳴らすことが出来たのは、筆者としては小さな自慢となっています。
通常、個人投資家はポートフォリオを他人に見せる機会がありません。
どうせ税金の相談で他人にポートフォリオを見せるのなら、税理士がどのように思うかを聞いておいて損はないと思います。
Ⅲ 税理士に依頼する(確定申告前に相談する場合)
1.まず1年間の取引を整理する
まず、税理士に依頼する前に、取引履歴をダウンロードして、1年間の取引をご自身で振り返ってください。
そして、箇条書きで良いので、気になった取引をメモしてください。
例えば、
- COMSAのICOがあった。
- 誰々からコインを貰った。(コインを貰った理由もメモする)
- 昨年からの繰越枚数と単価
- 12月31日の各仮想通貨の残高、枚数(スクリーンショットでも可)
- 自分が把握しているだいたいの年間利益の額
- 利用した取引所
- レバレッジ取引(信用取引、FXなど)の有無
- 昨年の仮想通貨計算方法(移動平均法、総平均法など)
- その他記憶に残った取引
- 税理士と連絡可能な時間
この段階では、税理士に委託することはまだ決まっていないのですから、自分で確定申告を行うつもりで1年間の取引を振り返ってください。
2.税理士に見積もりを依頼する
取引所からダウンロードした取引履歴と箇条書きの取引メモを税理士事務所に送付し、税理士から受託の可否や見積金額を出してもらうようにしましょう。
確定申告書の作成まで依頼される場合には、仮想通貨以外の所得の内容(例えば源泉徴収票)についても、税理士事務所に提出してください。
3.税理士との打ち合わせ
一度は税理士と会って打ち合わせをすると思いますが、正式な契約を結んだ後も、税理士と何回か話す機会があると思います。
Guardianは、税理士と依頼人のやり取りは全てメールでやり取りすることになっているようですが、筆者は必ずしもそれが良い方法とは思いません。
税理士側からは、どうしてそのタイミングでビットコインを購入したのか、どうしてそのタイミングでアルトコインに変えたのか、と言った取引の意図を確認しておきたいと思うことがよくあります。
例えば、ビットコインに投資していたが、気になるICOがあり、そのICOに参加するためにはETH(イーサリアム)に変える必要があったので、全部のビットコインをETH(イーサリアム)に変えた。
その後、ICOでX百万円儲かったので、次は、送金の遅いビットコインではなく、XRP(リップル)の時代だと思い、儲かったX百万円をXRP(リップル)に投資した。
このようにストーリー建てて説明してもらえる方が、税理士も計算がやり易いのです。
将棋で、コンピューターはその場面ごとに考えられるが、人間はストーリーがないと考えられないというのと似ています。
ご自身の確定申告なので、できるだけ税理士に協力してあげたほうが良い結果に結びつくと思います。
4.依頼人自身も忘れている取引
筆者が、依頼人の取引履歴を振り返っているうちに、依頼人から事前に聞いていた残高とどうしても数字が合わないアルトコインがありました。
筆者は困って依頼人に連絡をとり、質問することにしました。
依頼人からの回答は、その仮想通貨は自分の仮想通貨ではなく、友人の仮想通貨の残高だというのです。筆者はかなり驚きました。
奥様の家計管理が厳しく、見かねた依頼人が代理で友人の仮想通貨を購入していたというのです。
筆者は、依頼人に他人の仮想通貨は本人に返却するように助言して、取引履歴から他人分を除いて、雑所得の金額を計算しました。
このケースはとてもシステムで対応できるような内容ではありません。
株取引では考えられないことが仮想通貨ではおこりえるのです。
5.計算完了までに必要な時間は?
このように、税理士側で分からない取引があった場合、依頼人にその都度確認を取らないと計算が進められないので、一概にこれだけの期間があれば計算ができるとは言えません。
税理士に相談される場合は、余裕をもって早めに相談したほうが良いでしょう。
6.計算終了後
計算が終了したら、税理士から計算の結果と中身について説明を受けてください。
ご自身で申告される場合は、雑所得の金額にその計算結果の数字を入力して、確定申告書をご自身で作成・提出してください。
確定申告書の作成まで税理士に依頼されている場合は、完成した確定申告書を見せてもらいましょう。見せてもらった確定申告書の内容で良ければ、税理士が電子申告や郵送で確定申告を完了してくれます。
以上が、税理士に確定申告を依頼する場合の流れになります。税理士事務所によって少し変わるかもしれませんが、概ねこのような流れだと思います。
現段階では、仮想通貨に詳しい税理士は限られていますので、早め早めに動いておく方が良い結果に結びつくことは間違いありません。
Ⅳ むすびに変えて
最後に、筆者が仮想通貨を取り巻く世界がこうなったらいいなぁ、という要望を書かせていただいて、結びにかえたいと思います。
1.取引履歴の統一フォーマット化
まず、税金の計算に関しては、取引履歴の統一フォーマットを作ってほしいということです。
複数の取引所のCSVファイルを継ぎ足せば、あたかもひとつの取引所で取引したような取引履歴になれば、投資家自身が自分で仮想通貨の損益を計算できるようになるはずです。
税理士のみならず、仮想通貨計算アプリを作っている人たちが、多種多様な取引履歴のフォーマットに対応しようとしているのは何かすごく無駄なことをやっているように思います。
2.簡易な税制
ふたつめは税制に関しての要望です。
筆者は、一定の免税点を設けて、その免税点以下の人は仮想通貨に関して税金は課税しないといった仕組みが必要だと思います。
例えば、金融資産1億円未満の人は無税で仮想通貨を自由に取引できるようにしたら良いと思います。
そうしないと、仮想通貨でモノを購入したときにいちいち税金のことを考えなければならず、結局、仮想通貨は単なる投機の対象で、実際に使われなくなるのではないかと懸念します。
フィンテックで日本が世界をリードするためにはこれくらい大胆なことをやる必要があると筆者は考えます。
フィンテックの技術を通じて日本がもっと豊かで元気になることを願ってやみません。
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