会社員と比べて楽?会社員と個人事業主の確定申告の違いと仮想通貨の利益を申告しなければならない基準
まず、サラリーマンの「確定申告」について確認をしていきましょう。サラリーマンの場合、会社が「確定申告」に準ずる手続きとして「年末調整」をやってくれています。
「年末調整」とは、会社に「生命保険料控除証明書」や「地震保険料控除証明書」を提出するアノ手続きのことです。人によっては「住宅ローン控除」の適用を受けている方もいらっしゃるかもしれません。
前の記事はこちら→仮想通貨で利益を上げた億り人が確定申告をしたくないと考える理由と3つの事例

サラリーマンの確定申告
なぜサラリーマンは確定申告をしないのか
従って、
- サラリーマンで年収2000万円を超える方、
- 2か所以上の会社から給与を頂いている方、
これ以外の方は、この「年末調整」によって「確定申告」に準じた手続きが済んでしまっているので、「確定申告」をする必要はありません。このため確定申告の経験がない、という方がたくさんいらっしゃるのです。
利益が20万円以内なら確定申告は不要
サラリーマンの方限定で、仮想通貨の利益についても特例があります。「給料」「退職金」以外の所得が20万円以下の場合は、確定申告をしなくても良いという特例です。国税庁のウェブサイトにもしっかり書いてあります。
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm
もし、あなたがサラリーマンであるなら、12月中に20万円以内で仮想通貨の利益を確定させておいて、確定申告をしないという選択も考えられます。
そうすると、利益を確定した約20万円×税率分の節税となります。
仮想通貨をいくらで購入したか、などはまとめておいた方が良い
ただし、その場合でも、来年以降のことについて考えておく必要があるでしょう。あなたがその仮想通貨をいくらで購入したのか、単価はいくらなのか、そういった整理は確定申告をしなくても、やっておいた方がよいです。来年以降の税金計算に関わってくるからです。
ちなみに所得税率は人によって違いますので、こちらで確認しておきましょう。
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
サラリーマン20万円の落とし穴
サラリーマンで年末調整も済んでいる。仮想通貨の利益も20万円以内だ。だから確定申告はしなくてもいいだろう。こう思う方は非常に多いですが、すぐにそう決めつけるのは危険です。
例えば、
- たまたま病気で入院してしまい多額の入院費用がかかったので「医療費控除」の適用を受ける。
- 実は仮想通貨以外にも副業をしていて確定申告しなければならない。
- 株やFX、先物取引を行っていて確定申告行う必要がある。
このような場合には、サラリーマンで「年末調整」を行っており、仮想通貨の収益が20万円以下でも、仮想通貨の利益を含めて確定申告をすることになりますので注意しましょう。
個人事業主・フリーランスの確定申告
確定申告書にはAとBがある
個人事業主・フリーランスの方は確定申告を毎年されていると思いますので、サラリーマンに比べて心理的なハードルは低いでしょう。
サラリーマンや年金生活者の方は「確定申告書A」という申告書を使います。「確定申告書A」は比較的シンプルで数字を入れる箇所も少ないので確定申告書も作成しやすくなっています。
個人事業主・フリーランスの方は、「確定申告書B」という、入力する箇所の多い少し複雑な申告書で確定申告を行います。ただ、こちらに関しては基本的に誰でも使えると国税庁の公式サイトに書いてありますので、個人事業主でもサラリーマンの方でも使えます。
仮想通貨の確定申告については、個人事業主・フリーランスもサラリーマンと同じ
確定申告に使用する申告書は別ものですが、仮想通貨の部分に関しては、個人事業主・フリーランスの方の申告もサラリーマンの方も同じです。「総合課税の所得」の入力画面の「雑所得-その他」に入力しましょう。(前回の記事を参照してください。)
仮想通貨取引は事業所得になる?
個人事業主・フリーランスの方で、「いや、私の仮想通貨取引は、雑所得ではなく、事業所得です。」という方もいらっしゃるでしょう。
確かに、「雑所得」よりも「事業所得」として申告できれば、税務上有利ではあります。
「青色申告特別控除65万円」の控除が受けらますし、損失を3年間繰り越せるなどのメリットがあります。また、必要経費の対象も広く取れるのではないか、という考えもあるでしょう。
しかし、その仮想通貨取引がご自身の事業に付随したものでないと「事業所得」と主張するのは難しいです。
「事業所得」となりえそうなのは、例えば、仮想通貨取引所業、仮想通貨マイニング業、仮想通貨を決済に用いている事業、などでしょう。
国税庁も「原則として、(仮想通貨は)雑所得に区分されます。」と書いています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf
税務リスクになりかねませんので、ご自身の判断で「事業所得」に区分される前に、「事業内容」と「仮想通貨の取引内容」の両方を持って「事業所得になるか否か」を税務署に確認された方がよいでしょう。
サラリーマン、個人事業主・フリーランスの共通の注意点
雑所得の損失は繰り越せない
個人事業主・フリーランスの方の多くが「青色申告承認申請書」を提出されていると思います。65万円の特別控除の他、損失が翌年に繰り越せるのが大きいからです。
ところが、雑所得(仮想通貨)の場合は、損失の繰越しができません。市況が良い時は利益が出ることだけを考えていればよいでしょう。しかし、いずれどこかで損失が発生するかもしれません。その時、事業所得や株取引のように損失を繰り越せないのが仮想通貨取引なのです。
仮想通貨は、損失を繰り越せない不利な取扱いになっている、ということも今のうちから考えておきましょう。
どうして雑所得は損失を繰り越せないのか
なぜ雑所得は損失を繰り越せないのか、と思われる方もいらっしゃるでしょう。雑所得のいわゆる「雑」とは、「給与」や「事業」のような区分に分類できないもの、つまり「その他」の区分という意味なのです。
そもそも「その他」の区分の扱いですから、仮想通貨のような損失が発生しうる、という個別の事情までは考えられていない、ということなのだと思います。
ただし、将来は変わる可能性もある
筆者の勝手な考えですが、将来的には、仮想通貨取引を、FXや先物取引のような分離課税として取り使うよう法改正した方が良いと思っています。
実は、現在分離課税として一律に20%の課税とされているFXも、かつては仮想通貨と同じように雑所得で、たまたま儲かった人に多額の税金が課されていた時期がありました。それが改正されたのがようやく2012年のことです。
一部の政治家からも、仮想通貨の税制を見直すべき、という声も既に上がっています。今後制度が改正さる可能性もありますので、注視していく必要があります。
e-taxを使えば税務署に行く必要もなく、提出書類もほとんどない。
進化するe-tax
筆者が10年に初めてe-taxを使ったときは、株取引の「特定口座年間報告書」の原紙をe-taxとは別に税務署に郵送しなければなりませんでした。
電子申告を行っているのに、別途書類を郵送で提出しなければならないのであれば、申告書を印刷して書類を一緒に税務署に郵送しても同じことです。
当時は「何でこんなことをやっているのだろうなぁ」などと思っていました。しかし時代は変わりました。
筆者の確定申告
筆者の2017年分の確定申告には、配当所得、給与所得、事業所得、譲渡所得(株式)、雑所得(先物)とバリエーションに富むものでした。
しかし、この中で、書類(紙)で提出したのは、事業所得の「青色申告決算書」だけです。(ちなみに仮想通貨は法人口座にしています)
「青色申告決算書」も電子データですませることもできたのですが、自宅が税務署からさほど遠くないこともあり、紙での提出を選択しました。
筆者の例はかなり変わった例だと思いますので、多くの方は電子的に確定申告をすませられるはずです。
進むペーパーレス化
2016年分の確定申告と大きく変わったのは医療費控除です。これまでは領収書を税務署に提出していたものが、2017年分の確定申告から「提出不要」になり明細書を作成するだけでよくなりました。
少しずつ電子化は進んでいるのです。
筆者の事務所は東京の多摩地域にありますが、今回の確定申告から管轄税務署でも完全にPCでの確定申告作成に切り替わりました。
つまり、自宅のPCで確定申告書を作成しようが、税務署に行って確定申告書を作成しようが、作業内容はほぼ一緒ということになります。
確定申告が初めての方はマイナンバーカード準備して、ぜひご自宅のPCで確定申告書の作成にチャレンジしてください。
次の記事はこちら→どの時点で利益は決まる?仮想通貨で税金が決まる利確タイミングとは
iDeCo・ふるさと納税・仮想通貨の申告に対応、個人事業主・会社員の副業でも使えるおすすめ会計ソフト
-
個人事業主の銀行口座・屋号(開閉)
-
請求書未経験者のための作り方・送付方法(開閉)
-
個人事業主の節税(開閉)
-
ふるさと納税(開閉)
-
仮想通貨の確定申告(税理士執筆)(開閉)
-
e-tax(電子申告)について(開閉)
-
クラウド会計ソフトfreeeについて(開閉)
-
フリーランスと保育園(開閉)