フリーランスの子供が認可保育園に入りづらい理由【個人事業主・幼稚園】
役所が管轄する認可保育園は保育料も安く安心感もあるため、多くの母親が入所を希望しています。しかし、保育園の数と必要な保育士の人数が圧倒的に足りていないことが原因となり「待機児童」という社会問題になっています。
フリーランスの子供が認可保育園に入りづらい理由
▼フリーランスや自営業は保活に不利?
そんな中、年々競争が激化する「保活」において、フリーランスや自営業の人は「特に不利」と言われています。
例えば、役所の保育課窓口で「自宅で仕事をしている場合、家庭で保育出来ると判断するため点数が低くなります」と言われたり、
会社員以上に時間を取られる仕事をしているにもかかわらず、自宅で仕事しているという理由だけで「内職」扱いされ、点数が低くなるケースなど、多くの自治体で「フリーランスや自営業の人が子供を保育園に入れることが難しい」という状況が続きました。
こうした不公平な状況を改善すべく、2017年には厚生労働省と内閣府から各自治体に対して「居宅内就労に対して一律に点数を低くしないこと」などを含む内容の通知が行われましたが、実態として「保活の格差」が改善されたかというと「まだまだ地域差がある」というのが現実です。
ここでは、こうした保活にまつわる「行政の対応の変化」も踏まえ、フリーランスや自営業の子供はなぜ認可保育園に入りづらいのか、その理由を解説していきます。
▼保育園入園における「点数」制度
認可保育園に入るには役所による審査があり、「保育園に入れる必要がある家庭状況かどうか」を点数化して選考される仕組みになっています。
例えば、一般的に「夫婦共に会社に正社員として雇用され、外でフルタイム(1日8時間以上)勤務、同じ敷地に子供を見る家族が他にいない」といったケースが高得点を獲得しやすい傾向にあります。
ここ数年では認可保育園の競争率は激しく、多くの自治体では「月あたり労働時間の長さ」の他、「ベビーシッターや認可外保育園を利用した実績がある」「兄弟や姉妹が入園中」などの調整点数によっても調整され、合計点数が決まります。
これらの「加点・減点」は、フリーランスや自営業者にとって「居宅内就労は一律減点」など、非常に不利な状況が長い間続いたため、2019年現在では、前述した「厚労省・内閣府から自治体への格差是正通知」により、「宅内で仕事をしているだけで減点する自治体」は減少傾向にあるものの、完全になくなった訳ではなく、横浜市などでは同じ労働時間でも「宅内労働」というだけで1ランク下回るなど、まだまだ自宅で働く人が保活で不利な状況は続いています。
▼フリーランスや自営業の子が保育園に入りづらい理由
役所としては「夫婦共にフルタイム勤務」という就労形態が最も分かりやすい一般的な就労形態で、それ以外の働き方は「基本的に例外」として扱われてきたため、
外勤のサラリーマンに比べて自営業やフリーランスは実態を理解されにくい印象があります。以下、「フリーランスや自営業が保育園に入りづらい理由」を具体的に見ていきます。
▼1.居宅内労働は「自宅で保育が可能」とみなされる場合がある
自営業やフリーランスが保活で不利となりやすいのが「居宅内就労」です。ひと昔前では、「自宅で仕事」といえば「漫画家や作家」「イラストレーター」などが主流でしたが、
最近では、自宅での仕事が可能なフリーランスのデザイナーやライター、プログラマーなどが増えました。自営業やフリーランスの中でも、こうした「居宅内就労」に該当しそうな人は要注意です。
実際、地方の自治体では、認可保育園への入所難易度は高くないものの「居宅内勤労の自営業」は大幅に減点される傾向にあります。
逆に、地方に比べて競争率の高い東京23区などでは、「厚労省からの通知」による影響が大きく作用しているためか、「居宅内就労」は若干減点されるものの「半分になる」などの極端な減点はありません。
働き方の多様化が進んでいる都市部と、待機児童の少ない地方とでは「居宅内就労」に対して自治体の理解度が反映されている様にも受け取れます。
▼2.「夫婦で自営業」の場合、協力者とみなされて減点対象となる場合がある
多くの自治体では、自営業の中でも「中心者」と「協力者」では点数に差がつきます。外勤・内勤にかかわらず、「夫婦2人で何か商売を営んでいる」場合、
どちらか一方が「協力者」とみなされ、大幅に減点されるというものです。要するに「奥さん(旦那さん)はお手伝い程度」「それなら家庭での保育が可能なはず」という理屈なのでしょう。
この、自営業における「協力者かどうか」の判定は「賃金が低いかどうか」で決まる場合もあれば、夫婦2人のうち、片方が自動的に協力者とみなされる場合もあります。
例えばその地域の「最低賃金」が支払われていれば、中心者と判断されたり、年間を通して役所が定めた「一定の収入」があれば中心者と判断されるなど、自治体によって対応は様々です。
この様に、役所独自の基準で「協力者か中心者か」を判断され、保育園入園の可否に影響が及ぶことは、夫婦で切り盛りする自営業者にとっては打撃です。
自営業者は、節税のために「青色専従者控除」や「扶養控除」を活用して給与を調整しているケースが珍しくありませんが、税制上のメリットを捨てて「妻の給与を高く設定」し、保活を有利にするかどうかは、それぞれの状況にあった判断が必要です。
いずれにしろ「夫婦2人で自営業」という場合、日頃からどんぶり勘定ではなく「給料」を明確にしておくなどの対策が必要です。
▼3.育休明け加点がない
フリーランスや自営業の保活が不利だとされる理由として、「育休明け加点」がないという点も挙げられます。会社員の場合、育休明けに復職する人は「育休明け加点」がつきますが、
フリーランスや自営業の人が「出産前後に仕事の受注を減らし休暇を取った」場合は対象とならず、この加点はあくまで会社員が対象となります。
会社員の育休に加点されるのは何故でしょうか。これには「認可外保育利用加点」との調整が背景にあります。
「育休加点」が登場する前から、認可外保育園に子供を預けている実績があることで加点がつく「認可外利用加点」がありますが、この加点を得るため、育休を早々に切り上げて認可外保育園の利用実績を作る母親が増えました。
これにより、「しっかり育児休暇を取った母親」が不利となるケースが増え、その不公平感をなくすために「認可外を利用した人だけでなく、育休明けの人も加点を」という自治体からの配慮からこの様な加点要素が加えられたようです。
会社員であれば「育休明け加点」を狙うか「認可外利用加点」を狙う、両方を比較して自分に合った計画を立てられますが、「育休明け加点」の対象でないフリーランスや自営業の場合は選択肢が限られてきます。
そもそも会社員は「育児休暇制度」によって育児のための休暇取得が保障されており、雇用保険に加入しているため「育児休業給付」として賃金の50%が支払われるなど、手厚い支援が受けられます、一方、フリーランスにはこうした保障が一切ありません。
また、会社員の育休は「通常1年=子供が1歳になる迄」ですが、認可保育園に落選することによって最長2年にまで延長できるため、「育児給付金を受取りながらもう少しの間育児休暇が欲しい」という人がこの「育休延長のための落選狙い」で、落ちることを前提に申し込みするケースもあります。
育休という視点で見ても、制度に支えられた会社員と比較してみるとフリーランスはかなり不利と言わざるを得ません。
▼4.仕事量をセーブしたら「過去3か月の就労実態証明」で不利になる
また、フリーランスや自営業の人は、育休がないため、自分でコントロールして出産前後に仕事の受注量を減らす必要があります。当然ですが、それに伴い収入も労働時間も減ります。これが保活において不利になることがあるのです。
外勤か自営かに関係なく、保育園入園の加点要素として「勤務時間の長さ」がありますが、会社員の場合は会社発行の就労証明書を提出するだけで勤務時間を証明できますが、自営業やフリーランスの場合、自治体によって「過去3か月の就労実態」が求められることがあります。
会社員は「出産前の働いていた時期」の勤務時間で就労実態が評価されるのに対し、自営業やフリーランスは、入園申込み時の「直近3か月」の勤務時間で評価されるため、保活で会社員と同じ土俵に立つには「産後もフルタイム」で働いて実績を作る必要があり、身体的にもかなりの負担を強いられます。
▼5.就労を証明するための書類が複雑で量も多い
会社員であれば、勤務先の会社から就労証明書を発行してもらえますが、自営業やフリーランスだと、自営就労申立書(自治体によって名称は様々です)などを、自分で作成して提出しなければならないなど、とにかく自力で「自宅で子供を保育できない状況」を証明しなければなりません。
自営業やフリーランスであっても「建築業の一人親方」や「自宅とは別に店舗がある」「業務委託契約のマッサージ師」「客先常駐のエンジニア」などの場合は、
会社員と同じ様に「外勤であることの証明」が可能ですが、自宅で仕事をするのがメインのデザイナーやライターなどは、「内勤=自宅で保育できそう」という事で配点が不利になりやすい傾向にあります。
また、フリーランスとして働き始めた人の中には、専属の1社だけとの契約で事実上「雇用されている」様な感覚で仕事をしている人もいるかもしれませんが、
この様な場合、雇用契約がない以上、あくまで「個人事業主/フリーランス」となり、当然ですが、相手企業に「就労証明書をください」と言っても発行してもらえないため、役所には何らかの方法で就労実態を申告することになります。
この様に、「自営やフリーランスの就労実態を申告するための書式」が多くの自治体では用意されていないため、独自に「契約書や受注書」を提出するなど、自営業者やフリーランスの多くが負担を強いられています。
▼まとめ
ここまで「フリーランスの子供が認可保育園に入りづらい理由」をいくつか上挙げました。
2017年に厚労省などから自治体へ通知された「多様な働き方に応じた保育所等の利用調整等に係る取扱いについて」という通知により、
以前よりも「フリーランスは圧倒的に不利」という状況は幾分か改善された様にも見えますが、それでも正規雇用の会社員と比較すると、「まだまだ不利」と言わざるを得ません。
また、一概に「地方に比べて待機児童数の多い都市部はフリーや自営が不利」という訳ではなく、むしろ待機児童の多い都市部の方が、厚労省が通知した「働き方による格差是正」を意識した「細かいルール」を設定している自治体が多い印象です。
住んでいる地域の自治体が、どの様な配点をしているかをよく確認し、働き方に合った保活計画を立てましょう。
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