仮想通貨の億り人が所得税を払えなかった場合はどうなる?シミュレーションを交えて考えてみた。
仮想通貨で儲かった人が一体いくら税金を払わなければならないか、を考えた時に、所得税の税率表を見るのは悪くない方法だと思います。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm
インターネット上では便利に所得税・住民税が計算できるアプリケーションやエクセルファイルが提供されています。
しかし、それらの多くが、そもそも事業者向けであったり、古い税率のまま変更されていなかったり、必ずしも全幅の信頼を置けるものではありません。
前の記事はこちら→仮想通貨の確定申告後に税金を支払うタイミングと所得税の納付方法をまとめました!
仮想通貨の億り人が所得税を払えなかった場合はどうなる?
Ⅰ.夢の億り人の税金
1.億り人の税率
それらのアプリの前提条件をあれこれ考えるよりも自分の頭でざっくり考える方が、余程スッキリすると思います。
例えば、上記の所得税の税率表に当てはめて
- 1億円×45%-4,796,000円=40,204,000円(所得税額)
シミュレーションであるならばこれも立派な計算だと思います。
2.確定申告書を作ってみよう
サラリーマンの方は確定申告の経験がないからか、「確定申告」を何か特別のことのように考えられる方もいらっしゃるようです。
しかし、サラリーマンは決算書を作る必要がないので自営業者よりもずっと簡単に確定申告ができます。
ここではサラリーマンとして働きながら、仮想通貨で1億円の利益を上げられたNさんの例を考えてみたいと思います。
Nさんのサラリーマンとしての年収は600万円でした。これ以外に仮想通貨で1億円を2017年に獲得されました。その場合、税金の計算は次のようになります。
Ⅱ.所得税計算の流れ
1.収入・所得金額を整理する
年収600万円ですと給与所得控除後の金額は426万円になります。
給与所得控除とは、サラリーマンの方は自営業者のような必要経費がありませんので、その必要経費に相当する部分を計算で求めていると考えればいいかもしれません。
給与の総支払金額から「給与所得控除」を引いた値が税金計算の基礎である「所得」となります。
この給与所得に、雑所得1億円を加算します。Nさんの所得金額は次のようになります。
- 給与所得4,260,000円+雑所得100,000,000円=所得金額 104,260,000円
2.所得控除を整理する
所得金額に税率をかけて税額を計算する前に、認められた「所得控除」を計算します。このNさんは独身で、引き算できる「所得控除」は社会保険料控除と基礎控除だけです。
所得控除
- 社会保険料控除911,100円 + 基礎控除380,000円= 所得控除合計1,291,100円
3.課税所得金額を計算する
- 所得金額104,260,000円 - 所得控除1,291,100円 = 課税所得金額 102,968,000円(千円未満切り捨て)
4.所得税額を求める。
- 課税所得金額102,968,000円×45%-4,796,000円=所得税額 41,539,600円
5.復興所得税を求める
- 所得税額41,539,600円×2.1% = 復興所得税 872,331円
6.納める税金を求める
- 所得税41,539,600円+復興所得税872,331円=42,411,900円(百円未満切り捨て)
7.所得税の計算は電卓でもできる
文章で書くと長くなってしまいますが、サラリーマンの所得税の計算は十分電卓で計算できるということがおわかりいただけると思います。
Nさんの所得税の計算例の流れにそって計算すれば、ご自身の源泉徴収票と仮想通貨の利益の額から所得税の金額を求めることができます。
もちろん、国税庁の「確定申告書作成コーナー」に数字を打ち込んでも良いでしょう。
Ⅲ.最高税率
1.シミュレーションとの違いに気づく
いちばん最初にシミュレーションしたときは、
1億円×45%-4,796,000円=40,204,000円(所得税額)でした。
ところが、確定申告書を作成してみると復興所得税を除く所得税額は41,539,600円となっています。
この差は41,539,600円-40,204,000円=1,335,600円はどこから来たのでしょう?
2.総合課税と復興所得税
答えは、総合課税という仕組みにあります。
つまり、仮想通貨がなければ、低い税率が適用されていた給与所得426万円(年収600万円)が、雑所得1億円を加えることによって、給与所得に関しても改めて45%の最高税率が課されて、税額が増えてしまっているのです。
給料の分に関しても税金が増える。意外と見落としやすいポイントかもしれません。
加えて、最高税率になってくると、所得税に2.1%加算される復興所得税も872,331円と無視できない金額になってきます。
結局、所得税と復興所得税を加えた税額は42,411,900円となります。
Ⅳ.住民税
住民税は、所得税計算の途中で出てきた「課税所得金額(総所得金額―所得控除)」の10%と考えておけば概ね正解です。
東京23区の例を示しておきます。
- 103,018,000円×4%=4,120,720円(東京都)
- 103,018,000円×6%=6,181,080円(特別区)
税率を掛ける前の金額が102,968,000円ではなく、103,018,000円となっているのは、所得税と住民税の基礎控除の額の違いによるものです。
所得税の基礎控除は38万円ですが、住民税は33万円であり、そのような違いがあります。
さらに細かいですが、調整控除額(都1,000円、区1,500円)と均等割(都1,500円、区3,500円)を加減算します。
- 東京都4,120,720円 - 1,000円 + 1,500円=4,121,200円(百円未満切り捨て)
- 特別区6,181,080円 - 1,500円 + 3,500円=6,183,000円(百円未満切り捨て)
都と区とあわせて10,304,200円が住民税の金額となります。
Ⅴ.具体的に納付すべき税金
所得税・復興所得税 42,411,900円、住民税 10,304,200円
合計52,716,100円が、Nさんが納付すべき税金となります。
1億円稼ぐと半分以上が税金でなくなるという話が本当であることがお分かりになると思います。
Ⅵ.億り人が所得税を払えなくなる理由
億り人は、利益の半分以上を税金として納付しなければならないことを確認しました。
具体的には、3月15日までに、5万円超の現金を納税資金として銀行預金に入れておく必要があるということです。
中には儲かったので豪遊して納税資金が足りなくなったという人もいるかしれません。
1.市場の変動
しかし、もっとおそろしいのは市場変動による損失でしょう。
2017年中に1億円の利益を確定させて、一旦現金化したものの、もう一度仮想通貨へ投資を行い、その資金が半分以下になってしまった。こうなった場合は、納税資金が足りなくなってしまいます。
2.市場の変動で税金が払えない!
例えば、次のようなケースです
- 2017年11月 仮想通貨で1億円の利益達成。全て売却し現金化。
- 2017年12月 市況がまだ良さそうなので仮想通貨へ再投資。ビットコインを@220万円で45枚購入する。
- 2018年3月 ビットコインが@90万円に下落。納税のため全てビットコインを売却する。しかし、全て売却しても4千万円(@90万円×45枚)にしかならず、5千万円超の税金が払えなくなる。
まとめると、
2017年に1億円の利益。2018年に6千万円損失。それでも4千万円の利益が残っているはずです。しかし、1年目の税金は5千万円超なので、トータルで1千万円のマイナスです。
税金は1年ごとに計算するためこのようなことが起きてしまうのです。
しかもビットコインの値動きは、空想ではなく実際の値動きです。ありえる話なのです。
仮想通貨への投資は税金のことまで考えながら行う必要があります。
Ⅶ 確定申告しなかった場合はどうなる?
もし、この億り人Nさんが税金は払えないと考え、確定申告をしなかったらどうなるでしょう?
税務調査があって、無申告であることがわかると、もともと納めるべき税金に加えて、20%の税金が上乗せされます。これを「無申告加算税」と言います。
具体的には、
- 500,000円×15%+(42,411,900円-500,000円)×20%=8,457,380円(無申告加算税)
となり、かなりの金額となることがわかります。ペナルティは甘くはありません。
さらに、無申告の場合には、「無申告加算税」に加えて、後でご説明する「延滞税」という税金も別に課されます。
Ⅷ.所得税を払えなかった場合はどうなる?
次に、確定申告を行ったが、市況の悪化などで納税しようと思っていた税金が払えなかったケースを考えてみましょう。
税金を払えなかった場合は、もともと納付しなければならない税金の他に、「延滞税」という税金が余分にかかります。
「延滞税」は、納期限から2か月以内では2.6%、それ以降は8.9%の税金が課されます。
一年間納付が遅れた場合を考えると、次のようになります。
- 42,411,900円×2.6%×60日÷365日=181,267円(最初の2か月分)
- 42,411,900円×8.9%×305日÷365日=3,154,167円(2か月を超えた部分)
合計すると1年で3,335,434円の「延滞税」が課されることとなります。
「延滞税」も無視できない金額だと思います。
Ⅸ.税金を払えない場合には「延納」という仕組みがある。
税金を期限までに納付できない場合には、「延納」という仕組みがあります。
具体的には3月15日までに、納付すべき税額の半分以上を納めておくことで、残りの納付を5月31日まで伸ばす仕組みです。
この場合も「利子税」という税金がもともとの税金の他にかかります。
「利子税」は、要するに、年1.6%の利息を払うことで、税金の納付を先延ばしさせてもらう仕組みです。
「延滞税」と似ていますが、「延滞税」と違って「利子税」はペナルティとして課されるものでありません。「利子税」年1.6%の負担が許容できるのであれば利用しましょう。
「延納」の手続きは確定申告書でできます。納税資金が不足しそうな方は、「延納」も選択肢にはいると思います。
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